1/3 声変わりと、初めてしたお願いの話
(今回のエロパート部分はKPが一晩で書いてくれました) はじめは喉の違和感だった。 日に日に悪化して、声がかすれてうまく話せなくなった。 村にたった一人しかいない医師は、単純な触診ののちに告げた。 「声変わりだな」 医師は自らの喉をさすってみせる。いずれこのように喉仏が出てきて、三ヶ月、遅くても一年経てば、自分の声は大人の男のそれへと変貌するらしい。 「良かったな、一歩大人に近づいた証だぞ」 医師は笑ったが、十五になったばかりの千種の胸に広がったのは絶望だった。踏み出す先は千種にとって、底の見えない奈落でしかないのだから。 自室へ戻れば、儀式の間から甲高い喘ぎ声が聞こえてくる。 聞き慣れたそれが酷く耳障りで、千種は深く毛布を被った。 双神は好んで女を抱く。 彼らと出会った頃、十三になったばかりの自分は、下手に歳を食ったそれらよりも白く柔らかな身体をしていた。だからこそ彼らは、子猫のように膝に乗せて可愛がってくれていただろうと千種は思っている。 けれど、いまやどうだ。身長は日に日に伸びている。肌も決して白いとは言えない。ごつごつと骨ばってきた腕も、生え揃った下生えも。少年の輪郭を失って、大人の男へと近づいていく己の身体が、千種には恐ろしくて仕方がなかった。 ……これ以上身体が変わってしまったら、自分はどうなるのだろう。 元より、美しいと称されるような顔立ちなど持っていない。肢体の柔らかさは失われつつあり、残ったこの声さえも、もう少しで低く醜く潰れてしまう。寵愛に至るそれらを失くした自分の身体など、神にとっては不要の供物にしかなり得ないのではないだろうか。それでなくとも、あの双神は気まぐれなのだ。朝には興味を持っていた玩具を、日が落ちる前に要らないと捨ててしまうほどに。 同じように唐突に捨てられてしまったら、どうやって生きればいいのだろう?身体が不要になったとしても、他で役に立てるのならば、このまま御許においてくれるだろうか。 ……未知なる外の世界であれば、自分の価値を見出せるだろうか。 「やっと来たね」「遅かったね」 掌と拳を合わせ一礼すれば、二柱の神はシンメトリーに腕を広げる。促されるままに寝台へ上がると、機嫌の良さそうな双神は、千種を久しぶりに膝に乗せてくれた。彼らは昔からよく千種を寝所へ呼びつけるが、千種を抱かないこともままあった。今日は珍しく後者の気分らしい。気まぐれに千種の髪に指を絡めたり、頬を手の甲でゆっくりと撫でたり。児戯めいたそれは、いつものような性感を齎すものではない。 千種は普段と同様に、ただ黙ったまま身を差し出していた。しかし猫にするように喉をなぞりあげられた瞬間、反射的に身体が強張ってしまう。その変化に神が気づかないはずもなく、彼らは両側から顔を覗き込んできた。 「どうしたの?」「痛かった?」 千種はゆるく首を横に振り、己の喉元に手をやった。以前よりも突出してきているような気がして、寒気にも似た不安に小さく息を吐く。そんな千種の頬をあやすように爪先で掻く彼らは、やはり機嫌が良さそうだ。……ならば、やはり機会は今しかないのではないか? そういえば、彼らに何かをねだるのは初めてだ。これが最初で、たとえ最期になろうとも……言わなければ、いずれ捨てられる未来は変わらないのなら。 意を決して、千種は顔をあげた。 「……我が双神に、御許しをいただきたいことがあります」 千種の言葉に、双神は一度顔を見合わせる。 「僕らにお願い?」「珍しいね」 「どうしようかな」「まあ、聞いてあげよっか」 「「なあに?チグ」」 「……外に……学校に、行きたいのです」 口に出した瞬間、千種はひゅっと息を呑んだ。表情こそ変わらないものの、二柱の纏う雰囲気が一瞬にして変貌したからだ。 「今、なんて言ったの?チグ」「もう一回言って」 二柱の大きな掌が、千種の肩を包む。身体に纏わりつくような重苦しさに、呼吸が浅くなっていく。 いつもならば、前言を改め陳謝しただろう。そうすればこの空気もすぐに霧散して、彼らは何ごともなかったかのように、また己を撫でてくれるに違いない。……けれど、今は引き下がるわけにはいかなかった。 「そ、……外、で、」 乾く喉から絞り出すように、千種は言葉を紡いだ。 「外で勉学に励めば、教団の役に立つこともできます。拾われる前から……後だって、おれは何も知りません。この教団の中のことしか……これでは、何もできません。何の役にも立てません。ですから、どうか……」 震える声で語った千種の切なる願いも、神にとっては子供の言い訳にすぎなかったのだろうか。彼らの顔から、終ぞ笑みが消えた。血の気を引かせる千種の前で、双神はどちらともなく顔を見合わせる。 「どうして急にそんなこと言い出すのかな」「暇だからじゃない?」 「じゃあ、どうしたらいいのかな」「どうしたらいいのかなあ」 いつもと変わらぬ声色で話しながら、彼らは同時に千種を見た。怒りも悲しみも歓喜も安寧も、なにひとつ読み取れない金の瞳を細めて、わらう。 「暇だなんて感じられないくらいに」「なんにも考えられないくらいに」 「「たくさん可愛がってあげなきゃね」」 少しずつ男性に近づいていく体であっても、双神の巨躯にはすっぽりと覆われてしまう。膝に乗り上げたままの体に這う4つの手がいやに冷たくて、千種は身震いした。揃った彼らの声色に、不興を買ったのだということは理解できたが、このまま自分がどうなるのかはわからなかった。 気がつけば、身につけていた衣服は全て取り払われていた。大きな掌が、頭を、首を、胸を、背中を、太ももを撫でる。彼らにしては優しい手つきで、まるで陶器を値踏みでもするように、ゆったりと撫で上げていく。つい、と伸びた爪が際どい箇所を擦るたびに、散々仕込まれてきた体はピクピクと反応した。 「チグ、かわいい」「かわいいね」 甘やかな声が響く。双神のそれぞれの太腿で支えられた体から、くたりと力が抜けた。彼らの胸にもたれると、それを許さないとばかりに肩をつかまれる。スラーは右から、ラースは左から。片手で体中を撫で上げながら、彼らの顔が近づいてくる。首筋に吐息がかかるだけでそわりと足が動く。 食べられる。その表現が正しいような気がした。大きく開いた口から舌が伸びてきて、耳殻を掬い上げた。全身が震えて、腰のあたりがビリビリと痺れる。そのまま舌先が深く深く押し込まれると、とびきり大きな声と共に、千種の体が跳ねた。ぐちゅ、ぐちゅ、と直接脳をなぞり上げるような音がする。 「う、うう、あ……!」 はくはくと、震える唇を開閉する千種に構わず、双神は両の穴を蹂躙していく。片耳は出し入れを繰り返したり、触れる寸前で息だけを送り込んだり、もどかしい刺激と強烈な快感が交互に押し寄せる。ピクピクと跳ね上がる体は押さえつけられて、少しでも快感から逃れようと腰を振るのを止められない。 「きもちいい?」「きもちいいよね」 「チグ、ここ好きだもんね」「チグはこっちも好きだよね」 囁きながら、全身を這い回る彼らの手が胸まで迫り上がってくる。さんざん躾られた胸の先を黒い爪がカリ、と引っ掻いた。 「ぉ……!」 一瞬の刺激だったが、千種の体は大袈裟なほどのけぞった。カリカリ、と乳頭の溝をほじられると、胸の先から電気が流れて背中に伝わり、頭まで駆け登ってくる。強すぎる刺激に思わず目を瞑ったが、咎めるように顎を掴まれる。 「ダメだよ、チグ」「よく見て」 「チグが大好きなことしてあげるから」「こうやって、くるくるされるのも気持ちいいね」 吐息と共に耳穴へと吹き込まれると、期待からか、彼らの指先から目が離せなくなる。整えられたその指が、爪先で弄んでいた乳首をくるりとなぞる。くる、くる、くる。催眠術でもかけるみたいに、何度も円を描く。そのまま、陥没するように一度強く押しつぶすと、反発し膨れ上がった乳首を上下にくりくりと捏ね回した。 「ひ、う、……ぉ、ごめ、ごめんなさい、ぉお……っそれ、や……」 「いやじゃないでしょ」「やじゃないよね」 逃げるように胸をそらしても、逆効果だった。尖った乳首を摘み上げられると、そのまま腰ごと浮いてしまうのではないかと錯覚するほどに、ふわふわと意識が濁っていく。乳首をぱちんとはじかれて、何度も何度もくりくりされて、千種はあっけなくのぼり詰めた。芯のない竿が腹にあたって、押し出されるように薄い白濁が溢れていく。 「ぉ、お……っ♡」 「ほら、大好きだった」「言った通りだね」 「ここだけじゃないよね、チグ」「こっちの先っぽもだーいすきだよね」 「乳首とおんなじように、可愛がってあげる」「気持ちよくて泣いちゃって、外には行きませんって気持ちになるくらいにね」 「や、……ごめ、なさ……やだあ……」 「そうじゃないでしょ?」「やめて欲しいならちゃんと言わなきゃ」 「行かないって言わなきゃ」「やめてあげないよ」 神に対して、小さな体。彼らが少し腕を伸ばすだけで、くたりともたげた千種の肉茎は簡単に捕まえられてしまう。ラースが竿を握り、スラーが玉を掴む。まったりともどかしい刺激に耐えた千種の体は、予想を裏切り与えられた強烈な快感に身をよじった。 ラースは、竿を搾り上げとくとくと最後まで精液を吐き出すと、そのまま赤く腫れた先端を3本の指でそっと包んだ。白濁に塗れた指からはくちゅ、と濡れた音がする。そのまま、先端をいじめ倒すようにちゅこちゅこと扱かれた。 スラーは、そっと陰嚢を揉み込むと、そのまま会陰部を指で何度もなぞり、くぱくぱと物欲しげに口を開くはしたない穴へと指を差し込む。抵抗することなく受けいれたそこは、1日ぶりの指に甘えるように吸い付いた。それをいなすようにスラーの指が中を掻き回す。時折、ラースの指から蜜を受け取り、湿り気を足すとまた指を差し込んでいく。柔らかな内壁の一箇所が大きく膨らんでいくと、スラーは勢いよくそこを押し上げた。ぐ、ぐ、と何度も叩きつけるように指を動かせば、千種が獣のように悲鳴をあげる。 「お、ぉ♡ ああ……っ♡」 バタつかせる足を押さえ込むと、耳殻に噛みつきながら空いた手を胸へと滑らせる。弱いところをまとめて責められて、千種の瞳から、口の端から、ぽたりと雫が落ちていく。 「気持ちいいねえ」「気持ちよくて幸せだね」 「ほ〜ら、ずっとこのままだよ」「行かないって言わないと」 「「いいの?」」 頭の中に響く声に惑わされながらも、千種は首を振った。外の世界へ。意志の強さは千種の美徳だったが、悪徳の双神にとってはただのわがままだ。与えられるだけの甘美な快楽にも溺れて流されてしまえばいいのに、それでもまだしがみついている千種に、二人は目を合わせることもなく同時に動かしていた手を止めた。 とめどない責め苦に舌を伸ばしていた千種は、ようやく大きく息をした。過ぎた快楽は呼吸をも奪ってしまう。取り込んだ酸素に脳が覚醒し始めた時、千種を挟み込むように座っていた神たちは、いつのまにか千種の前に並んで立っていた。惜しげもなく晒された裸体の中心には、雄々しく屹立する巨芯がある。 「あーあ」「ダメだなあ」 「チグ、まだわかってないのかも」「そうだね」 「あんなに可愛がったのに」「生ぬるかったんだよ」 「手加減しすぎたんだ」「きっとそう」 千種はそびえるそれに怯えて体を震わせた。逃げる事は敵わず、足を広げて座る千種を引き寄せると、スラーがその巨芯を沈めていく。子供の腕ほどあるのではないかと思うそれは、さんざん寵愛を受けた千種の中へとすんなり飲み込まれていった。根元まで納めると、彼らの間をまたぐようにラースが立ちはだかった。 眼前に晒された御身に、千種の黒目が寄る。ふう、ふう、と息を荒げてしまうのは条件反射だ。それでなくとも、勢いよく穿たれたことで千種は一度吐精していた。ラースは自身の幹を握りながら、何度か千種のつるりとした額へと擦り付ける。筋が浮いてボコボコとした感触を伝えながら、ずりずりと前後する。溢れた先走りが千種の髪を濡らした。 「甘やかすよりこっちの方がいいのかな」「きっとそうだよ、ナカもうねってる」 「───ッ♡」 舌を伸ばしてちろりと味わうと、嗅ぎ慣れた匂いが頭を満たした。筋を伝って根元の膨らみが鼻の穴を塞ぐと、なおさらそれが強くなる。長年仕込まれた千種の頭には、奉仕の二文字しか浮かんでいなかった。千種は犬のようにぱかりと口を開いて待ち侘びているだけでいい。あとはラースが勝手に使ってくれるのだから。 「いいこだね、チグ」「きもちいい」 丸みのある先端から口の中へと入ってくる。太い幹に喉奥を突かれて嘔吐くのに構わず、髪を掴み上げたラースはさらにその奥へ進んでいく。陰毛に顔が埋まりそうなほど押し込まれる頃には、千種の瞳は裏返っていた。 下からも上からも突き上げられ、まるで一本の杭で貫かれたような錯覚に陥った。打たれた杭でこの村に縛り付けるように、もう二度と外へ出たいなどと言わないように。 「……っほら、チグ、苦しいよね」「苦しくて、……っ気持ちいいよね」 「嫌なら言わなきゃ」「外に行かない、だよ」 「言えるよね?」「抜いてあげるから、言ってごらん」 がぽ、と雄芯が体内から引き抜かれる。唾液と共にゆるく吐瀉しながら、千種はがくりとうなだれた。 「ごめんなさい、ごめんなさい……っ」 「んん?」「謝るんじゃなくてさ」 「外には行きません」「そう言えばいいんだよっ」 「ぉ、オ゛……っ♡お゛お゛っ♡」 千種の弱点に狙いを撃つように、スラーが再び穿つ。千種は、口を窄めて迫り来る快感に顔を歪ませるが、獣のような嬌声のほかに出てくる言葉は謝罪のみであった。 ベッドへと勢いよく体を倒される。千種の引き締まった尻を高く持ち上げると、スラーは蹲踞して腰を振りたくる。破裂音と体内から届く結腸を超えた音が響き渡った。喉仏を晒して喘ぐ千種の口を狙って、ラースが杭を差し込んでいく。腰を動かすたびに、晒された喉仏がぽこり、ぽこりと膨らんだ。 千種は必死で鼻呼吸を繰り返しながら、神から与えられる試練に耐える。時に過ぎた快楽に飲み込まれそうになっても、双神からの甘言に頷く事はなかった。陳謝し、あとは肉の宴に踊るだけだ。薄れる酸素に意識が遠のいていく。双神ともどもの屹立がいっそう膨らんだかと思うと、千種の体内へ濁流が放出される。量も勢いもあるそれはしばらく注ぎ込まれ、広がりきった淫穴から溢れ出し、喉奥から鼻まで吹き出したころ、ようやく収まった。 白濁に塗れた千種は、ガクガクと体を揺らし、強く目をつぶった。雄叫びはラースの白濁を飲み込み声にならなかったが、千種の雌芯からはちょろりちょろりと透明な何かが流れ出ていく。 「チグが素直に言えるまでやめないからね」「チグは素直ないい子のはずだもんね」 双神の中心に屹立するそれは、溺れるほどの白濁を吐き出してなお剛直であった。あらゆる体液を垂れ流す千種を抱き起こすと、向かい合う双神の間に座らせる。細い腰を浮かせ、スラーの巨芯を埋め込むと、みっちりと広がった窄まりを、ラースの切っ先が突いた。みちみちと、嫌な音と共にラースが入ってくる。一つでも受け入れ難いそれが、二つ。奥の奥まで入り込んで、千種は苦しさに呻いた。やめて、と静止の声と共にラースの白濁を喉から吐き出していく。 「だからチグ」「気絶なんてまだしちゃだめだよ」 胃を押し上げるような二つの杭に縫い止められて、千種は息ができなくなる。双神の言葉を遠くに感じながら、意識がブラックアウトしていった。 「起きないね」「さすがに限界か」 スラーが頬を軽く叩き、ラースが名を呼ぶ。千種は身体をぐったりとシーツに沈ませたまま、深い寝息を立てるばかりだ。どうやら完全に落ちてしまったらしい。 「結局行かないって言わなかったね」「謝ってはいたけどね」 「「うーん」」 さて、どうしたものか。そう言わんばかりに、二柱の神は同時に首を傾げる。ラースは千種の顔を覗き込んでもう一度名を呼び、スラーは頬から手を離したその流れで、同じ色に染まった前髪を軽く梳いてやった。すると、千種の指がぴくりと反応する。 ふらふらとさまようそれは、未だ近くにあるスラーの手に触れたかと思うと、長い小指を赤子のようにきゅうっと握った。そうして、からからに掠れた声で、神の名を呼ぶ。 「…………らー、さま、…………ースさま…………」 続いた五文字は、唇で形作られるばかりで声にはならなかった。 ……一呼吸分の静寂。 双神はお互いに顔を見合わせたあと、もう一度千種を見下ろした。 「僕らのって自覚はあるんだもんね」「当然だけどね」 眠る人の子からは、当然ながら返事はない。それでも双神は言葉を続けた。握らせた指はそのままに。 「しかたがないなあ」「一度くらいならね」 柔らかな輪郭を失い始めていても、少しも変わらない寝顔を覗き込みながら。 「ちゃんといい子にできるならいいよ」「できるならね」 「「いいよ」」 目覚めたばかりの千種が見たものは、己を見下ろす双神の尊容だった。まだ覚醒しきっていない彼は、揃った言葉に寝ぼけ眼のまま首を傾げる。しかし、一拍ののちにそれがなんの赦しであるのか気づくと……慌てて居住まいを正し、拳と掌を合わせて深く礼をするのだった。 ← →